膝の痛みを引き起こす可能性のある病気の一つに「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」があります。
腸脛靭帯炎が疑われる症状
膝の痛みや、それに関連する症状として、以下のような特徴が見られる場合は腸脛靭帯炎が発症している可能性があります。
- 膝の外側に痛みを感じる
→走っている時や走り終えた時、指で押した時など
初期は膝の外側が緊張して硬くなったり、違和感や痛みを感じます。ランニング後などに痛みが現れ、休むと治まります。
症状が進行してくると、痛みは徐々に強くなり、なかなか治まらなくなって慢性化します.
重症化すると痛みで膝の曲げ伸ばしの痛みが強くなり、膝を伸ばしたまま歩くといった状態になります。
痛みが発生するのは、膝を曲げた状態から伸ばした時です。ランニングなら地面を蹴った瞬間になります。
大腿広筋膜とも呼ばれ、太ももの外側をおおっている長い靭帯。大転子という脚のつけ根の骨から、太ももの外側をとおり、脛骨(膝下の骨)にまでつながっている。膝の外側の安定を保つ役割を果たす。
腸脛靭帯炎は、別名「腸脛靭帯摩擦症候群」や「ランナー膝」、「ランナーズニー」とも呼ばれ、腸脛靭帯に炎症が起きている状態です。ランナーズニーはランニングによる膝の関節周辺の障害全般の総称としても使われます。
腸脛靭帯は、大腿骨(太ももの骨)の外側に位置し、膝を伸ばした時は大腿骨の前方に、曲げた時は後方に移動します。この移動の際に、大腿骨外顆という骨の外側のでっぱり部分にぶつかったりこすれたりします。膝の曲げ伸ばしをするたびにこすれて摩擦が生じるため、その回数が増えると炎症が発生します。
炎症は脛骨部分で発生することが多いですが、まれに股関節のあたりの大転子部分にも起こります。
また、登山や階段の上り下りにおいて、特に下りの動作で負担が大きくなり、腸脛靭帯炎が発症しやすくなります。痛みが見られやすいのも上りよりも下りの時です。
【腸脛靭帯炎を発症しやすい人】
腸脛靭帯炎は陸上競技の長距離選手に多く見られるスポーツ障害です。近年のランニングブームで市民ランナーが症状を訴えるケースが多くなっています。
特に、O脚(内反膝)の人や、走行フォームで足の外側で体重を受けるクセのある人、膝関節の変形が進んで膝が不安定になっている人など、体重による負荷が身体の外側にかかるケースで発生しやすくなります。かかとの外側がすり減ったシューズを履いていたり、斜めに傾いた道路や雨でぬかるんだ道を走ったりするのも良くありません。
また、硬い路面や下り坂の走行、硬いシューズの使用も、負担を増す要因となります。
【腸脛靭帯炎が発症しやすいスポーツ】
バスケットボール、陸上競技、自転車、水泳、トライアスロン、登山、スキー、エアロビクスなど
腸脛靭帯炎の診断・治療・予防
【診断】
基本的に問診や触診で症状を確認して診断します。
よく行われるのが徒手検査法という診断法です。膝を90度曲げた状態で大腿骨外顆膝(膝のすぐ上の外側出っ張り部分)を指で押しながら膝を伸ばします。この時に痛みが発生すると腸脛靭帯炎の可能性が高いです。
【治療】
膝を使う運動を中止し、安静を保つことが基本です。
症状が軽度であれば、しばらく休養することで痛みは解消します。痛みが強い場合は、炎症を抑えるために患部を冷やすアイシングを行ったり、腸脛靭帯を伸ばすストレッチなど運動療法を行うと回復を早めることができます。
当院で行う治療は、まずフットプリンターにより足の状態(アーチや指)を確認し、テーピングにより足のバランスを正しい状態に矯正します。
そして深部のインナーマッスルまで通電できる特殊な電気治療器により、痛みを起こしている筋肉の浅層から深層までしっかりリリースをかけていきます。
痛みの程度によって個人差はありますが、1度の治療でかなりの痛みの軽減が見られます。
週1〜2回ほどの通院でほとんどのケースで治癒します.
【予防法】
腸脛靭帯炎が起きる主要因は、膝の使いすぎ(オーバーユース)と柔軟性不足(ウォームアップ不足)です。
自分の筋力・体力に見合った運動・トレーニングを行い、度を超えた長時間・長距離のランニング、同じ練習メニューの繰り返しなど、膝を酷使する過剰な運動は避け、疲労が溜まったら十分な休養を取ります。
運動前のウォームアップと、運動後のクールダウンはしっかりと行い、普段から筋力トレーニングと柔軟体操を習慣的におこなって、大腿四頭筋や大腿二頭筋など膝に関係する筋肉の強化とと柔軟性アップを図ることで予防や再発防止に役立ちます。
シューズやランニングコースの見直し、O脚の矯正も効果的です.
腸脛靭帯炎にお悩みの方はぜひ1度ご相談ください.