こんにちは!
今日はバドミントン選手に多く見られるスポーツ傷害について書いていきます。
バドミントンはコートの中でネット越しにシャトルを素早く打ち返し、
機敏な動作が要求されるため、下肢の傷害が多くみられます。
ラケットによる上肢へのストレスは比較的軽いため、あまり重大な傷害はみられません。
ただし競技歴によっては、オーバーユースによる慢性障害がみられることもあります。
よくみられる傷害については、
・肩インピンジメント症候群
・アキレス腱断裂(アキレス腱炎)
・尺骨神経障害(尺骨神経炎)
などがあります。
では、他によく起こるスポーツ傷害につても合わせて解説していきます。
★インピンジメント(衝突)症候群
インピンジメント症候群とは、肩関節の内部組織の慢性的な障害や外傷のことをいいます。
肩関節をとりまく筋肉には三角筋や上腕二頭筋など外側についている筋肉のほかに
ローテーターカフ(日本語では腱板:けんばん)と呼ばれる小さな筋肉が多く内部に存在しています。
このローテーターカフが骨との間に挟まった状態になると、腕の付け根あたりに痛みを伴うようになります。
水泳や野球の投球動作など肩を水平面以上に上げた状態で過度に使用したり、
機能学的に不安定な動作を繰り返すとインピンジメントがおこることがあります。
このような傾向が見られたらまず肩の使用を極力減らすようにして、アイシングをすることが大切です。
痛みが軽減してきたら使用する前のウォームアップを十分に行って筋肉をあたためること、
ストレッチを徹底し柔軟性の高めることなど効果的です。
同時にチューブなどを使ってローテーターカフエクササイズのトレーニングをおこない、
再発防止につとめるようにしましょう。
★ 肩関節(亜)脱臼
上腕骨と肩甲骨をつなぐ肩甲上腕関節(いわゆる肩関節と呼ばれる部分)は
実に様々な動きをすることができます。
それは同時に肩関節の不安定性を持ち合わせています。
投球動作など腕が肩より上方にあがり、
振りかぶった姿勢のときが関節力学的に弱い肢位(状態)とされ、
そのときに大きな力やストレスが肩にかかることで脱臼することがあります。
そのほとんどは上腕骨が前方にズレる前方脱臼といわれるものです。
脱臼は完全に関節の接地面がズレた状態、亜脱臼とは一部関節の接地面が残っている状態をいいます。
亜脱臼の場合は肩の位置が通常と変わらないように見えますが、少しでも動かそうとすると痛みを伴います。
脱臼の場合は異常に肩が落ちた状態が見られます。
このような傾向がみられたらただちにアイシングと圧迫を実施し、
バンテージなどで固定をしてすぐに医師の診察を受けるようにしましょう。
一度肩関節の脱臼を起こすと8割以上が再発するといわれており、関節が不安定になっていくとされています。
保存的には安静とローテーターカフを含めた肩関節周囲筋群の強化をおこなうようにします。
重度の場合は手術療法をおこなうこともあります。
★シンスプリント
疲労骨折と同じような発生形態ですが、症状が軽く骨膜(骨を覆う膜のこと)までの損傷の場合をいいます。
シンは下腿を意味し、スプリントは距離走のことを意味します。
陸上競技の選手などがランニング中に下腿に痛みを訴える状態の総称です。
脛骨(けいこつ:すねの骨)の中下1/3、やや後内側部に生じることが多く、
脛骨周辺部を押すと痛みがあります。
疲労性骨膜炎ともいわれ、骨そのものには異常はありません。
痛みがある場合は局所の安静をはかり、
練習量を減らして膝や足関節、アキレス腱、腓腹筋(ひふくきん:ふくらはぎの筋肉)の
ストレッチングや筋力強化を痛くない程度おこないます。
練習後はアイシングします。
またシューズも衝撃吸収能力の高いものを選び、
硬いアスファルトの上などを長く走らないようにしましょう。
★アキレス腱炎
思春期を過ぎるとアキレス腱の老化がはじまるといわれ、
また使いすぎにより硬くなり、激しい運動で小さな断裂が生じることがあります。
いずれの場合にもアキレス腱、または腱を覆う腱傍組織(けんぼうそしき)に炎症がみられ、
アキレス腱そのものの場合はアキレス腱炎、腱傍組織の場合にはアキレス腱周囲炎とよばれています。
アキレス腱そのものや、アキレス腱の周縁部に自発痛と圧痛があり、腫れたり、
ギシギシと音がすることもあります。
小児ではアキレス腱の踵骨(しょうこつ:かかとの骨)への付着部が痛むことが多く、
踵骨骨端症と呼ばれます。
また成人では骨がアキレス腱に引っ張られてトゲ状となり骨棘(こつきょく:骨のトゲ)形成を生じることもあります。
このような状態をよくするためには、
腓腹筋(ひふくきん:ふくらはぎの筋肉)とアキレス腱のストレッチングを行い、
運動直後には5〜10分氷冷するとよいでしょう。
慢性期では暖めてからマッサージやストレッチングをして柔軟性を回復させます。
疼痛がひどい場合はアキレス腱サポート・テーピングや包帯固定を行い、
踵のショック吸収力のよいシューズを選ぶことが大切です。
★肘関節脱臼
コンタクトスポーツや転倒の可能性のあるスポーツによく見られ、
過度に肘関節を伸ばした際に強い圧迫力が加わると肘関節が脱臼することがあります。
肘の脱臼の場合は前腕や手の骨折を伴うこともあり、その点に留意することが必要です。
肘関節脱臼が起こると、関節の変形、強い痛みや腫れや動きの制限などが見られます。
このような状態が見られるときは、ただちに医療機関に搬送して整復処置を受ける必要があります。
それまでは肘を体幹に動かないように固定し、患部を約20分ほどアイシングをするようにします。
肘の靭帯損傷の程度によって手術をする必要があります。
たいていは安静と保護のため脱臼した肘を三角巾かスプリントで固定します。
脱臼した骨が容易に外れないようであれば、可動域改善のためのリハビリテーションを行い、
その後筋力トレーニングへと移行していきます。
この際は必ず専門家の指導のもと行うようにしましょう。
★ 尺骨神経炎
肘の後ろ側から小指にかけて通っている尺骨神経(しゃっこつしんけい)が肘の繰り返しの動作によって引き伸ばされ炎症をおこすことがあります。
投球動作やラケット、ゴルフクラブなどを持って反復動作を行う人に多く見られます。
はじめは激しい運動の後に肘の内側に違和感を覚えたり、痛みが起こったりします。
そのまま放置しておくと痛みは強くなり、前腕から薬指、小指にかけてしびれが起こったり握力の低下が見られたりします。
尺骨神経炎が慢性化してくると神経機能が停止し、前腕、手関節、手の多くの機能に障害をもたらします。
早期に発見した場合はただちに運動を休み、安静を取るようにします。2週間以上安静をとっても症状が軽減しない場合は、尺骨神経が神経溝からはずれている(脱臼)ことが考えられます。
この場合は手術によって元の位置に戻すことが必要となります。
以上がバドミントン選手に多く発生するスポーツ傷害です。
バドミントンは、見るとやるとでは大違いといわれるほど運動量の多いスポーツです。
ほとんどの選手は、身体のどこかに故障をもっていると言っても過言ではないかと思います。
当院は小中高生〜社会人・全日本クラスの選手まで、幅広くサポートしています。
バドミントン選手のケアは特に得意な分野でもあります。
なかなか治らない痛みにお悩みでしたら、悪化しすぎるまえにぜひ1度ご相談ください。