介護現場がとても重労働であるのは、介護に携わっていない人でも知っているかと思います。
介護現場で働く7割の職員がなんと、腰痛という悩みを抱えていることを知っているでしょうか。
最悪の場合は、腰痛によって仕事を辞めざるを得なくなってしまう方もいるのです。
これに伴い、厚生労働省が6月に職場での腰痛予防対策を行うよう指針を16年ぶりに改定しました。
福祉用具を積極的に利用して、人体的な疲労や苦痛を軽減することや、ご年配の方が安心して介護受けることができるよう、介護職員の腰痛予防を積極的に取り組むよう推奨しています。
腰痛対策に万全な力を注ぐことができない施設も全国的にはたくさんありますが、離職を防止するためにも腰痛対策のために器具を用いたり、施設をリフォームさせるということはとても重要であると考えられています。
指針では原則として介助者を抱き上げないようにすること、抱えなくてはいけない場合はリフトを活用するように求めています。
強制的なものではないので、費用の関係でリフトが導入できない施設も現状にはたくさんあり、指針が改定された今でも思うような腰痛対策ができていない介護施設もたくさんあります。
これからもっと高齢者が増え、介護施設が不足することが予想されています。
つまり、介護職員の人手が不足することも予想されているため、働く者にとって働きやすい環境をいかに作ることができるかが、今介護施設が抱えている大きな課題の一つとなっています。
腰痛防止が介護の質をあげることにもつながるのはわかっていても、思うように整えられない現状をいかに打破するか、国をあげて対策を打ち出していかなくてはいけないでしょう。
一度腰痛になってしまうと、思うように介護をすることができなくなります。
これは、介護施設に働く者に限ったことではありません。
自宅で介護をする家族も、腰痛に悩まされ、腰痛と闘っている人はたくさんいます。
腰痛だからといって家族の介護をしないわけにはいきません。
介護施設のみならず、自宅介護においてもどのような方法で腰痛を予防していけばいいのか、これらもアドバイスしていかなくてはいけないのが介護職員のもう一つの使命として課せられたことだと思います。
介護しやすい環境を整える
ベッド付近の床に電動ベッドのコードやエアマットのコードがあると、移乗するときにコードに足を引っ掛けそうになり危ないです。
他に例であげるとすれば、電動ベッドなのにベッドの高さを調節しないで移乗していたりとか、意味のない「側」にベッド柵のサイドバーを置いていたり、とかですね。
利用者はもちろんのこと、介助者にも介護しやすい環境を整えましょう。
介護技術うんぬんというよりもまずはそういうことも大事ということですね。
適正な姿勢で介助する
利用者の介助をする時、無理な姿勢で利用者の介助をしていませんか?
立ったまま食事介助をすることは、腰に負担がかかるだけでなく、見た目的にも悪い印象を与えます。
もし、立ったまま食事介助をしているのなら上司に言ってすぐにでも介助用のイスを購入してもらいましょう。
利用者と同じ目線で、横に座って食事介助すること。基本です。
介護技術の大前提 〜ボディメカニクス〜
介護の仕事をしていれば、ボディメカニクスという言葉を聞くことが結構あると思います。
では、ボディメカニクスって何なのでしょうか?
要するに「力学の原理」を活用することです。
ボディメカニクスは、力のモーメント(能率)、重心、摩擦力、慣性力という「力学の原理」を活用する技術のことです。
これを知ることで、介助する側の腰への負担を軽減し、根拠のある介護技術を行うことが可能になります。
摩擦力
摩擦力というのは、人の身体がベッドなどに接触しながら動く場合、それを妨げようとする力です。
ベッドに触れている面積が大きいと、摩擦力も大きく介助する側の負担も大きくなります。
だから、利用者をベッドの上で動かす場合は少しだけでも身体をベッドから浮かせて動かしたほうが少ない力で動かせるのです。
慣性力
重いものの動きを変化させるには大きな力が必要で、その物体には大きな力が加わることを「慣性力」といいます。
要するに、利用者に立ち上がってもらうときに急な動きをすると、勢いあまってバランスを崩しそうになりますが、これは「慣性力」によるものです。
なので、介護にあたっては、なるべく急な動きをしないことが大事です。
当たり前ですが、腰痛にならないためにはきちんと体を休めることが大切です。
決して無理はしないようにしましょう。
「あ、これ以上がんばったらどうにかなっちゃう」っていうときには早めにご連絡ください。
人員不足の昨今、週に何度も通うのは難しいと思います。
当院は特殊な機械を用いて深部から治療していくので、通院頻度は週に1回ほどの方が多いです。
これならまだ通いやすいかと思います。
年末でお忙しいとは思いますが身体が資本なので、ご自分の身体を労る時間も作ってくださいね。