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ご覧いただきありがとうございます。
今日は登山における高山病と、呼吸法・低酸素トレーニングについて書いていきます。
自分自身に適した「呼吸法」の習得
高所で重要と言われる「呼吸法」ですが、日常生活の範囲では、呼吸法が上手にできているかどうか評価する事は困難です。上手な呼吸法が出来なければ現場ではパニックを起こしてしまいます。
また、自分が良いと思い込んでいる呼吸法が、高所にも通用する呼吸法とは限りません。
たとえば「深呼吸」。実は、4000m以上の高所できつい登りを歩いている時には、深呼吸では酸欠は改善されず高山病になる確立が高くなります。
また、ヨガなどの呼吸法は、リラックスを目的としているので、必ずしも高所で有効とは限りません。じゃあどんな呼吸が良いのか?
実は、万人に絶対これが良いという呼吸法はありません。
人には個人差があり、肺機能だけに絞っても、肺活量が2000mlの女性もいれば、6000mlの男性もいます。
また運動能力もそれぞれ人により異なります。
なのに同じ呼吸法で良いはずがありません。
個々に合った呼吸の取り込むタイミングや深さがあります。
ではどうすればいいのか?だから実際に低酸素環境で体験する必要があるのです。
低酸素環境では、基本的に酸欠になり、動脈血酸素飽和度(SpO2)が低下します。
SpO2が低下している状態で、上手に呼吸法が出来ると数値が上昇しますが、逆にできていないと、数値は変化しないか更に低下します。
この数値の変化によって、客観的に酸欠から改善されたかどうかが一目瞭然となります。
このように自分自身の生体反応を確認しながら、良い状態を探り出す訓練を「バイオフィードバックトレーニング」と言います。
当院で行うトレーニングでは、歩いたり、走ったりする時にもパルスオキシメータで常にSpO2をモニターしながらバイオフィードバックトレーニングを行います。
Webでは○○法がいいと書いてあったり、高所経験者から○○法がいいと聞いたなど、いろいろな呼吸法を試してみると、SpO2が上昇しないダメな呼吸法もわかります。
そのような方法は、ある人にとっては良くても自分には良くなかったということを客観的に判断することも出来ます。
2.呼吸を意識しない状態を慣らしながら自分の限界を探る
運動トレーニング
呼吸法が十分に習得できると、今度は呼吸を意識しない状態(酸欠状態)に徐々に身体を慣らしていきます。
動脈血酸素飽和度を下げることで、人間の持っている環境適応能力を引き出し、呼吸を意識していなくても活動出来るようにします。
当然、酸素飽和度が下がって、意識が朦朧とする状態を放置しすぎると倒れてしまう危険性もあります。
そうなる前に、習得した呼吸法で対応すれば大丈夫です。
そうは言っても、意識が朦朧とする状態では呼吸法すら忘れたり、呼吸をしようとする気力さえ失われることもあります。そのような状態になったとしても、低酸素マスクを外せば、すぐにエスケープできます。
どのような感覚が自分の限界なのか、ギリギリのところをバックアップがある状態で体験できます。
もし高所の現場で同じような冒険をしてそのまま倒れてしまっては、危険なことですが、低酸素トレーニングであればすぐに回避できます。
たとえば、70008000m級などレベルの高い山に行く予定の方であれば、1015kgの荷物も背負いながら、腕の運動も加えて、通常の登山では早すぎる時速56kmのスピードを6000mで歩き、その時の感覚や呼吸法を経験する事が出来ます。
このような経験がなければ、実際の登山でどこまで進めば危ないのかという判断が正確にできずに、対応や対策が遅れ、生命が危険に曝されることもあるでしょう。
運動トレーニングは、1回60分で、はじめの20分はウォーミングアップ、残りの40分はウォーキングやランニング運動を行ないます。
チベット旅行などのように、ほとんど車で移動する場合でも、なるべく歩いていただきながら、ご自身に合った呼吸法の習得を目指します。
このようなトレーニングは、高所に出かける直前の方が効果的です。(出発1ヶ月以上前には受ける事をお薦めします)
出発日が近いと、十分な対策が出来ない可能性もあります。
できれば、3ヶ月前くらいから十分なトレーニングを積んでおくほうが高山病のリスクは低くなります。
当院の低酸素トレーニングは最大6300mまで設定できる関西でも、まだない機械を設置しています。
高所のトレーニング対策もできるので、当院でも海外登山の対策で多くの方に利用いただいています。
エベレストに行かれた方も多くいます。
気になる方は一度お問い合わせください。