こんにちは
蒸し暑い日が続いていますね
今日はオーバーユース症候群についてお話しします。
オーバーユースとは聞きなれないかもしれませんが、日本語では「使いすぎ」という意味です。
一つの運動を一生懸命することで体の一部に使いすぎがおきます。
ケガと言うほどの大きな力が働いていない場合や、徐々に痛くなってきたような場合で、微少な外傷の繰り返しによる慢性的な機能障害の事をオーバーユース症候群といいます。
スポーツによるケガは急激におきる外傷ばかりでなく、オーバーユースにより慢性的に起きる場合を考えなければなりません。
基本的にスポーツとか、トレーニングというのは体力の向上が目的の一つです。体力をトレーニングで向上させるには、楽をしていては達成できません。体力の向上のためには、通常は身体機能の持っている能力を上回る負荷を与えます。
このような負荷を与えられた組織はそのままでは負荷に耐えられないために、新たに組織を強化しようとします。筋肉であれば、トレーニングで傷んだ筋組織を修復・再生する過程で筋繊維を太くします。心機能ならより多くの血液循環量が保てるように心臓の力が強くなります。
このように組織損傷に対する修復をすることでさらなる負荷に耐えられるようになり、身体能力の向上が得られるのです。このように、一旦傷められた、あるいはそれに近い状態に追い込まれた組織が回復する過程で以前の能力を上回るように回復していくということを超回復といいます。
従って、トレーニングの効果を得るには、それ相応の、修復に要する栄養素と時間が必要であるということに注意する必要があります。すなわち、「バランスの取れた食事・休養もトレーニング」なのです。
トレーニングをやりすぎると、修復に要する時間がなくなり、完全に修復される前に、更に傷められるという悪循環が起こります。このように修復能力を上回る負荷がトレーニングで与えられてしまうと使いすぎとなり、オーバーユース症候群が発生してしまうのです。
この負荷と、修復に要する期間は個人によって違います。選手に疲労感が見られたとき、負荷が大きすぎるのか、それとも本人の努力が足りないのかを見極めることは非常に困難なことではありますが、根性理論はメンタル面の強化と言う目的以外には、障害を増やして優秀な選手を壊すことはあっても、たくさんの優秀選手を生み出すことにはならないでしょう。
このように、オーバーユース症候群というものはその背景が重要であります。逆に考えると、ある程度の予防対策が可能なのです。
ほとんどのオーバーユース症候群は体力、練習量、十分な休養、の3つのバランスが崩れた状態で生じます。
これは個人差、特に成長期においては同じ年齢でも大きな差があります。したがって、個々人でメニューを立てる事が理想なのですが、プロなどの専門的な現場以外では、実際にはなかなか難しいことです。一般レベルとして出来ることは、これらの事柄を考慮して練習に当たることが最も重要でしょう。
代表的なオーバーユース症候群
オーバーユース症候群の代表的なものに疲労骨折があります。骨折は通常、転倒や衝突での1回の大きな力が骨に加わることでおきますが、小さな力が繰り返し加わることで、ついに骨が折れてしまう状態が疲労骨折です。
陸上選手の脛の骨や足の骨に起きる場合が多いのですが、競技によく使う所では下肢に限らず体中の骨に起きます。剣道選手では竹刀を振る前腕に起きることがありますし、ゴルファーの肋骨に起きてくる場合もあります。また、腰椎分離症も疲労骨折の1種です。
疲労骨折以外にもいろいろなオーバーユース症候群があります。上半身では野球少年にみられる野球肘が典型的です。軽いものでは肘の腱や靱帯の付着部の炎症による痛みが出ますが、ひどくなってくると骨が剥離してきます。
テニス肘として知られる上腕骨外上顆炎は肘関節近くの小さな骨隆起に炎症がおきます。骨隆起に付着する手首を動かす腱・靱帯の付着部で骨膜や筋腱に小さな傷がついて、炎症を起こします。
野球で起きる肩の痛みの多くもオーバーユースです。特に肩は痛みがあると「肩が上がらない、腕がしっかり振れない」という症状が出てきます。一つの故障が連鎖反応的に他の故障を引き起こしていき、野球が続けられないような障害につながる場合もあります。
また、下半身は上半身よりもオーバーユースの多い部分です。膝では跳躍競技に多いジャンパー膝があります。正式には膝蓋靱帯炎と言いますが、膝を伸ばす時に使う膝蓋靱帯がジャンプやダッシュの繰り返しで引っ張られ続けていると靱帯と膝蓋骨の間に炎症を起こします。ランニング競技では膝の内側に痛みが出るガ足炎や大腿の外側に痛みを生じる腸脛靱帯炎があります。
他にも下腿の内側に起きるシンスプリントや足の裏に起きる足底腱膜炎もあります。アキレス腱もオーバーユースでアキレス腱炎やアキレス腱周囲炎となってきます。
スポーツで起きる腰痛もそのほとんどはオーバーユースと言えます。「腰が痛くて…」ということで、病院でレントゲンやMRIなどの検査をしても全く異常はなく、医者も頭をひねる場合がありますが、腰はどんなスポーツでも使う部分であり、疲労がたまりやすい場所です。
成長期のからだ
成長期の子供の体は成長に関わる特徴があり、成長期には成長期特有のオーバーユースがあります。
成長期のオーバーユースの代表的な疾患はオスグッド病です。オスグッド病について詳しくは、オスグッド病の項目をご覧ください。
子供の体は大人に比べて柔らかいと言えます。(最近は体の固い子供も増えてきましたが…)これは本来、関節を安定させる役割の靱帯がまだ十分な強度を持っていないことにも起因します。そのために不必要に大きな動きを関節がするために体に過度な負担をきたしてしまいオーバーユースを起こしやすくなります。
オーバーユースの予防
まず、体を休ませることが大事です。オーバーユースは「金属疲労」にたとえることができます。
固い金属も繰り返して同じ力をかけているとひびが入ったり、折れたりしてしまいます。これが金属疲労です。
オーバーユースも繰り返しの力で体の構造が壊れてきます。しかし、金属と人間の体の違いは人間の体には金属と違って修復能力があることです。オーバーユースで壊れた体も人間の体は修復していく力があります。しかし、使っている状態ではこの修復には限界があります。
どうしても休憩や休息という「時間」が必要です。休憩や休息は体も心も休んでいて、何もしていない状態に思えますが、体にとっては壊れた部分を修復するために必要な時間なのです。
修復のためにはその材料も必要です。人間はこの材料を食事を通して体に取り入れています。スポーツ選手の合宿や遠征に帯同すると優秀な選手ほど、よく体を休めています。また、合宿や遠征の後半になっても食欲が落ちません。彼らは使った体を休養と食事でキッチリ戻して次の戦いにつなげる術を知っていると言えます。
オーバーユースは細かく見ていきますと、単なる量的な「使いすぎ」ではなく、いろいろな原因が潜んでいることがわかります。
トレーニングと休息のバランスを保ちつつ、痛みなくスポーツを楽しんでくださいね
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